翌日岬は目を覚ますと1通のメール着信があった。
健治からであった。
健治からのメール
おはよう。岬さん。
夜は眠れたかな?
今度の日曜日、出かけたいんだ。いいかな
岬は寝起きで最初は頭が回らなかったが、何回か読み返すたびに嬉しさがこみ上げてきた。
そしてすぐに返信をした。
岬からのメール
おはようございます。今起きました。
メールありがとう。
とっても嬉しいです。
是非よろしくお願いします。
岬は日曜日はバイトが入っていたが、店主に少しだけ早めに切り上げさせてもらうことにした。
そして日曜日の待ち合わせ場所で岬が待っていると、健治が走ってきた。
健治「ごめんね~。待った?」
岬「今来たところだよ。さっきまでバイトしてたから」
健治「今日ね。金魚の博覧会に行きたいんだけどいいかな?」
岬「金魚?」
健治「知らないかな?岬さんが想像しているような感じではない気がするなぁ。本当にきれいなんだよ」
岬はワクワクしてきたのだ
岬「それは、普通じゃないってこと。水槽とかじゃないの?」
健治「普通じゃないんだ。大きな金魚鉢だったり、色鮮やかで、きれいに優雅に泳いでいるんだよ」
岬「楽しみ~」
2人は途中珈琲を買い、歩きながら飲んだ。
岬「私喫茶店でバイトしてるんだ」
健治「へぇ~ じゃあ珈琲には厳しいね」
岬「最近は少しずつ分かってきたような気がするけど、良くわからないの」
健治「今飲んでいる珈琲はどう?」
岬「これはこれで美味しいよ」
健治「僕は珈琲には少しうるさいんだ。だから今飲んでいる珈琲店は美味しいとこなんだ」
岬「先に行ってくださいよ~」
2人はお互いの共通する話題で穏やかに話を進めていた。そうすると会場に到着した。
入場券を購入し中に入ると少し暗くなっていた。
2人の距離が少し近くなるような薄暗さだった。
岬「わぁ~」
と一言言葉を発した。
とてもきれいなライトアップときれいな金魚が優雅にあちこちで泳いでいるではないですか。
健治「言ったとおりでしょ」
岬「うん」
健治は半歩岬の前を歩きエスコートしていた。それに着いていくように岬はついていったのだ。
ある場所に来るときれいなウェディングドレスが飾ってあり、その周囲に金魚が優雅に泳いでいた。
岬は自分の夢をふと思い出したのだ。
そして式場に金魚がいるイメージを沸かせたのである。
岬「きれい~」
健治「こういう雰囲気好き」
岬「大好き」
健治「良かった」
2人は笑顔で見つめあった。そして人ごみがなくなった頃合いを見て、2人はキスを交わした。
大学2年の5月2人は恋に落ちた。
2人の交際は続いた。6月のある日、岬は1つの結婚式場の前で足を止めた。
新郎新婦がリムジンから降り、チャペルに向かうところであった。
岬「きれい~」 と言い
岬は花嫁を見つめていた。その傍らには、サポートする女性が数名見えた。
その中に明らかに先に先に動く女性がおり、その女性への視線に切り替わっていた。
プランナーらしき女性であり、岬が目指す人であった。
その女性はパンツスタイルで背筋がしゃんとして、耳にはインカムを装着し、常に気配りをしていた。
そしてきれいに、上品な髪形と化粧すべてが理想とするものであった。
岬は一つのことを思いついた。
マナー講習であった。マナー講習に行って、自分の癖を直し、恥ずかしくないような礼儀や作法を
身に着けることを思いついた。
早速携帯でマナー講習を検索すると沢山の講座が開かれていた。
岬は料金を比較し、その場で決心したかのように確定ボタンを押したのだ。
8月に入り大学も夏休み。バイトも健治との交際も順調に進んでいた。
そしてマナー講習が始まった。
立っている姿勢、座っている姿勢、言葉使い、視線、仕草、表情、着こなし、メイク、
ヘアスタイル様々な講座が待っている。
岬の中での本気の戦いが始まった。
そして、本気でウェディングプランナーになるための試練が幕を開けた。
それは言葉や仕草ではない、自分の考え方の甘さを叩き直す訓練であり、日常であった。
続く
By natsu